米国を席巻する『鬼滅の刃』――MLBとの大型コラボが示すIPライセンスの力(ちから)と魅力

MLB×『鬼滅の刃』 アニメ『鬼滅の刃』とMLBのコラボTシャツ

日本発アニメ『鬼滅の刃』の最新映画「無限城編 第一章 猗窩座再来」は、2025年夏の北米公開でオープニング週末US$7,000万(約103億円)超を記録し、アニメ映画として北米史上最高のスタートを切りました。公開から2週間が経ったいまも興行収入1位を維持し、全世界で814億円突破の歴史的な大ヒットを継続中です。この短期間でグローバルIPとしての圧倒的な存在感を再び証明しています。興行記録の詳細以上に注目すべきは、こうした勢いが生む「ブランド連動の機会」そのものです。

『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』第1弾キービジュアル

象徴的なのが、米メジャーリーグベースボール(MLB)との正式コラボレーションです。今年2025年3月から最初の受注を開始した本コラボは、7月にもTシャツの受注を開始。MLB 球団ロゴや選手名とキャラクターを融合させたデザインで、ドジャースをはじめ複数球場では来場者限定グッズの配布やドローンショーも行われ、スポーツ界でも屈指の話題性を示しています。

このコラボが実現した背景には、アニメファンとMLBファンのクロスオーバーが急速に進んでいること、そしてMLBが国際市場、とりわけ日本市場との結び付きを強化している戦略があります。『鬼滅の刃』はNetflixなどを通じて米国での認知度が高く、双方が狙う若年層・多文化層への訴求という目的が完全に一致しました。結果として、映画の宣伝を超えた「二重の集客効果」が生まれ、スタジアムへの来場者増加と映画館の動員拡大を同時に後押ししています。

今回の事例は、単なるアニメ映画の成功を超え、IPライセンスビジネスが持つ潜在力を雄弁に物語ります。限定グッズは高単価でも即完売し、二次流通市場でプレミアが付くほど。アパレル、食品、家電、観光といった異業種においても、物語性の強いキャラクターIPと自社ブランドを掛け合わせることで、新たな顧客層を獲得し、マーケティング効果を飛躍的に高める可能性があります。

映画のヒットは一過性のブームではなく、IP価値がグローバル規模で拡大しているサインです。法人が自社ブランドを次のステージへ押し上げる手段として、アニメIPとのライセンス提携はますます現実的で、かつ競争優位を生む選択肢となっています。『鬼滅の刃』とMLBの連携は、その最前線を示す格好のケーススタディと言えるでしょう。

さらに近年、人気IP(知的財産)とのコラボレーションは映画やエンタメ業界だけにとどまらず、一般消費者向けビジネスでも強力な成長エンジンとなっています。既存ブランドの商品やサービスに人気キャラクターの世界観を掛け合わせることで、新しい顧客層へのアプローチ、話題性の拡大、ファンコミュニティとの持続的な関係づくりが可能です。小売、飲食、アパレル、デジタルサービスなど業種を問わず、独自のブランド価値を高めながら売上と認知度を同時に伸ばせる手法として、IPコラボは今や有力な選択肢となっています。貴社の既存商品に「物語」や「感情」を加える次の一手として、人気IPとのコラボを検討する価値は大いにあるでしょう。