高校時代の試練が教えてくれたもの
私は現在47歳、今年で48歳を迎えます。起業して4年が経ち、7月から5期目に入りました。決して「順風満帆」と言える経営者ではありません。むしろ、まだまだ未熟で学びの連続です。それでもここまで歩んでこられたのは、私の人生の原点に「逆境を耐え抜いた経験」があるからだと思っています。
その原点は高校時代の野球部にあります。私は野球が大好きで、毎日泥だらけになりながら白球を追いかけることに憧れて入部しました。けれど、そこで待っていたのは想像もしなかった現実でした。暴力や無視、仲間外れ、物を隠される、現金がなくなるといった壮絶ないじめに遭ったのです。
「もう辞めたい」と何度も思いました。しかし私は、辞めませんでした。逃げたら一生自分を許せないと直感し、「最後までやり抜く」と決めたのです。野球が大好きだったからこそ、続けられたのかもしれません。
2年3か月を耐え抜き、最後の夏、補習授業で誰よりも早く登校した日。窓から見下ろしたグラウンドと、真夏の青空を見上げたとき、「よく耐えたな」と心から自分を褒めたい気持ちになりました。あの瞬間の清々しさは、今でも私を支えています。「逆境の中でも芯を曲げずに生きる」――それが私の生き方の基盤になりました。
社会に出ても続いた試練
専門学校を卒業して社会に出ても、試練は続きました。いくつかの職場で経験したのは「パワハラ」という新たな壁でした。大声で叱責される日々や、人格を否定されるような言葉。高校時代の記憶がよみがえり、手が震え、足が震え、言葉を発することができない経験もし、再び心が折れそうになることもありました。
それでも私は、自分に問い続けました。「“逃げる”という選択肢もあるけど、頑張ってみよう」と。そうやって、どんな環境でも必死に学び、やり抜いてきました。
その結果、海外駐在や部長職といった責任ある立場も任されるようになりました。もちろん順調ばかりではなく、失敗や挫折も数えきれません。しかし理不尽の中で働いた経験は、「誠実に人と向き合うことこそが信頼を築く唯一の道だ」という信念に変わりました。裏切りや不正を受ける痛みを知ったからこそ、私は「誠実さ」から逃げないと心に誓ったのです。
起業、そして経営者としての歩み
そうした経験を経て、私は4年前に「株式会社便利箱」を立ち上げました。
社名の由来は、妻と一緒に会社名をどうするか話し合っていた際、妻が私の部屋にあった台湾の郵便局のダンボール“便利箱”を見て「“便利箱”でいいんじゃない」と言ってくれたことに始まり、私たち夫婦の原点でもある“台湾”に関連することでもあり、「人や社会の役に立つための箱でありたい」という想いを込めました。
起業してからの4年間は、挑戦の連続でした。資金繰りに悩み、事業の方向性を見失いそうになることもありました。大きな成果を出せたと胸を張れる場面よりも、「どうすればもっと良くできるのか」と自問自答する日々の方が多かったかもしれません。
私は、経営者としてはまだまだ未熟です。けれど、その未熟さを恐れずに認めることもまた、私の強みだと思っています。なぜなら、未熟だからこそ学び続ける姿勢を持ち続けられるからです。学び続ける経営者でありたい。そしてその姿勢を周囲に見せることで、「一緒に成長できる会社だ」と感じてもらえるようにしたい。これが私の経営に対する信念です。
便利箱の理念 ― 誠実さを中心に
私の会社の理念は「利他・感謝・誠実・研鑽・不屈」です。その中でも特に「誠実」を中心に据えています。
誠実さとは、決して特別なものではありません。派手さもなければ、すぐに成果につながるわけでもない。しかし、長く人や社会と関わっていく中で、これほど揺るがない基盤はありません。私はこれまでの人生で、不誠実な仕打ちを数えきれないほど受けてきました。その痛みを知っているからこそ、同じことを人にしない。だからこそ誠実にこだわる。これが、私の経営の核です。
経験を社会の力に変える
いじめやパワハラの経験は、私にとって忘れられない過去です。
しかし、それをただ「傷」として抱えるのではなく、「力」に変えることが、私の使命だと考えています。
困難や挫折を経験した人が、もう一度挑戦できるような場をつくりたい。社会に出ることに不安を感じている若者に、「挑戦していいんだ」と伝えたい。発達障害やハンディキャップを持つ方が、自分の強みを発揮できるよう支援したい。そして、スポーツやキャラクターといったコンテンツを通じて、人々が笑顔になれる仕組みを提供したい。
便利箱の事業は多岐にわたりますが、根底にあるのは「希望を届ける」という想いです。
私の経験はそのためにある。そう信じて、これからも取り組んでいきます。
経営者として、そして一人の人間として
私は大きな成功を収めた経営者ではありません。むしろ、失敗を繰り返し、壁にぶつかっては立ち上がることの方が多い経営者です。けれど、その未熟さを恐れず、挑戦を続ける姿こそが私の強さだと思っています。
若い頃の自分に言葉をかけるなら、こう伝えたい。
「どんなに辛い仕打ちを受けても、自分を信じて進め。その経験は必ず未来の力になる」と。
あの頃の自分が耐え抜いたからこそ、今の自分があり、そして未来がある。同じように過去の経験で苦しんでいる人がいるなら、その人に寄り添える会社でありたい。それが株式会社便利箱の使命です。
終わりに
私はまだまだ学び続ける経営者です。しかし、誠実に、そして不屈の精神で、共に成長していける仲間やパートナーと未来を築いていきたいと願っています。
株式会社便利箱は、利他・感謝・誠実・研鑽・不屈を胸に、「誰かの希望を形にする箱」「誰かの想いを誰かに届ける箱」であり続けます。そして私自身も、その箱の中で、未熟さを恐れず挑戦し続ける経営者でありたいと思っています。